●お客様からのご相談・ご要望内容
メールでもお伝えした通りレコードの再生が出来なくなりました。自分でシェルコネクタを点検して青のリード線が外れた(切った?)。事前にコネクタのピンとRCAプラグ間はテスターで導通は取れていたので、接触不良かと思いましたが、いづれにせよ自分では修理出来ないので、不具合箇所以外の予防保全も含め、永く使っていけるように併せてフルレストアでお願いしたいと思います。内容についてはウルトラグルーヴさんにお任せしたいと思います。
●不具合箇所・症状の診断結果
症状:電源ON後、起動が遅く、78回転はモーターがノッキングして起動しない。33/45回転は起動後も不安定で、擦れるような大きな音がする。片chの音が出ない
再現:あり
原因:電源部の経年劣化およびモーターのクラッチ摩耗、スピンドル軸受けが注油されておらず、軸受け内壁(インナースリーブ)とスピンドル軸が擦れて金属の表面に細かい傷が付き、更に異物混入(ペットや髪の毛)と汚れや軸受け内の固着などにより摩擦が増大。結果、33/45回転は辛うじて起動するも回転が不安定、78回転は起動自体が不可でモーターは回転しようとするものの、固着で負荷が掛かっていたことや、クラッチが摩耗で滑り動力を伝達できずにカタカタと異音が出てノッキングしている。
音が出ない原因は3012Rの内部配線(Lch コールド1本)が断線。他にも内部配線の被膜が経年劣化で硬化し、アームパイプとベアリングシャフトの貫通部分でテンションが掛かっており、更にOリングベアリングとベアリングシャフトも一部腐食し、水平感度も低下していた。
結果:不具合箇所の修理とフルレストア共に完了
工数:1.75人日
費用:110,000円(税込、技術料&送料無料、工賃&部品代込み)
アームとプレーヤーをセットでレストアするため、SME(38,000円)とTD520系のレストアサービスパック(88,000円)を併用して通常の合計額126,000円→110,000円に割引致しました。
お届け後、プレーヤー本体とアーム共に1年保証で、保証期間終了後のメンテナンスや修理、ベルトやオイル購入、アームなどの仕様変更も承ります。
●担当者の見解
お預かりしたTD520S+3012Rは永年大切に使われてきた個体だと診断してすぐに分かりました。外装は年代的に綺麗なものの、TD520は電源、モーター、スピンドル軸受け、SME3012Rは内部配線の断線・経年劣化で被膜硬化、ベアリング固着で感度低下など不具合箇所がかなりある反面、過去に修理歴やメンテナンスした形跡もなく、ご申告の不具合は複合的な問題があり、個別の修理では解決しないことや再発する可能性が高い状態でした。
特にTD520Sは超重量級の砲金製アウタープラッター(約9gk)を採用し、起動後は重量があるプラッターが回転する慣性力とモーターを低トルクで動作させることで、背景が静かで造形美に優れた音場を再現しますが、電源やモーターのほか、スピンドル軸受けなど機構部もモーターに負荷が掛かないよう整備する必要があります。仮に電源だけ整備した場合はモーター起動時に掛かるトルクがプーリーにうまく伝わらず、ベルトが外れて起動しなかったり、モーターのノッキング、回転数が上がらず停止するなどの不具合が生じます。このような状態はドライブベルトに過度の負荷が掛かるため、伸びや割れなど寿命が著しく低下する原因にもなります。
今回は不具合箇所が多いことや、永く安心してご愛用したいというお客様のご要望と現状を擦り合わせた結果、部分修理ではなくTD520SとSME3012R共にフルレストアのパッケージ併用の割引で費用を抑えつつも、ACアダプターがノイジーで接触不良もあるため、電源部を純正TPN2000の上位互換になるトランス式強化電源仕様にアップグレード致しました。
また、TD520S+SME3012Rのフォノケーブルはトーレンス社がESOS機構のセンサーをアームに取り付けるため、RCA端子のコネクタ部を撤去して、フォノケーブルを自社調達品に変更してラグ板に半田付けされていますが、ケーブルは被膜の痛みや静電容量が大きくシールド性能も不足気味で、誘導ノイズやハムを拾いやすいことから新品交換致しました。
●フルレストア&不具合箇所の整備内容
【TD520S】
1,分解・洗浄・各パーツ点検
2,電源部:劣化した以下部品を新品全交換しております。
全ロジックIC×8、全トランジスタ×11、電解コンデンサ×3、フィルムコンデンサ×8、抵抗×1、3端子レギュレーター×1、ブリッジダイオード×1(400V/1.5A)、スイッチングダイオード×4、全半田補正、供給電圧調整
モーター:分解洗浄、クラッチ交換(新品)、プーリー研磨&傾き角度の調整、ベルト走行位置の調整、強化電源仕様トランス式AC-ACアダプター交換(新品、1.0A/18VA)
3,サスペンション:分解、ワイヤー点検、水平調整
4,スピンドル軸受け:内部洗浄、軸研磨、オイル交換
5,ドライブベルト交換(新品)
6,外装クリーニング、インナー&アウタープラッター洗浄研磨
7,ESOS機能の電源OFF位置の調整
8,総合調整、12時間稼働テスト
【SME3012R】
1,内部配線全交換
2,全分解・パーツ薬品洗浄・点検・研磨
3,ベアリング分解・洗浄・シャフト研磨
4,ヘッドシェルコネクタ分解・研磨・当たり調整
5,アース処理及びアースポイント研磨
6,外装クリーニング&傷取
7,フォノケーブル交換(1.2m、ドイツ製、低静電容量・Lowノイズシールド仕様)
8,インサイドフォースキャンセラーウエイトのテグス交換
●修理・フルレストアについて
修理のご依頼は不具合箇所のみの部分修理とフルレストアのいづれかで承ります。部分修理はご申告を頂いた不具合箇所のみ修理致します。
フルレストアは全分解後に部品の洗浄・研磨を行い、内外装ともに可能な限り手を入れて、初期性能の回復と音質を蘇らせます。不具合箇所が多い場合は部分修理で対応するより安く済む傾向があります。
修理・フルレストア共に製品をご購入した際に感動した初期性能と音質や音色を蘇らせることを第一優先に考え、音のイメージが変わる様な部品選択や回路変更、改造を伴う施術は行いません。
また、トーンアームなど片chの音が出なくなった場合など、両chの音質・音色差がないよう左右ch共に同じ年式・規格の同一部品を用いて修理・部品調達するため、多少お時間を頂きます。消耗部品や物理的破損がない場合は、オリジナルのパーツを極力残すよう手を入れ、基本に忠実なレストアを心がけております。
●修理受付の流れ
実機を弊社にお送り下さい。ご申告内容を元に各部診断の上、不具合箇所の特定と交換部品
の有無、工数を計算してお見積書を作成します。その後、御見積書を元に修理内容やご要望、金額を擦り合わせの上、ご依頼頂く流れになります。
【修理品送付先】
Ultra Groove
〒106-0032 東京都港区六本木7-11-18
電話:03-6233-9991 ※電話対応は行ってません。
キャンセルの場合は「着払い」で返送しますが、他社様のように診断料の請求など料金は一
切発生しませんのでご安心下さい。
●見積基準(税込)
①基本技術料:19,800 円
②工賃:1人日(8h)/44,000 円、1h/5,500 円
③部品代
部分修理は①~③の合計がお見積り金額になり、ヤマト運輸の着払いでご返却となります。
修理箇所は 3 か月保証で再発の場合は無償修理で対応致します。フルレストアは①が無料
になり、工賃・部品代込の一律料金、送料無料、1年保証になります。
※改造箇所や物理的破損がある場合はお見積りの上、別途部品代を頂きます。
●フルレストア料金(税込)
1,SME3009/10/12共通(SⅠ、SⅡ、R、M2-Rシリーズ)
【内容】パーツ全分解・洗浄・ワイヤー研磨、ヘッドシェルコネクタ、ベアリング周り、リフター降下速度調整、内部配線全交換、フォノケーブル交換(1.2m、XLRバランスは+5,800円)
一律:38,000円(基本技術料&送料無料、部品代込み)
工数:0.5人日
参考:https://ultragroove.tokyo/sme3009s2-restore/
2,トーレンスTD320&520系
【内容】モーター~ローター周りの異物除去、クリーニング、プーリー研磨、クラッチ交換
電源基盤のIC&トランジスタ全交換を含む劣化部品の新品交換・半田全補正、調整、
TPN2000互換の大容量トランス式電源交換(1.0A/18AVC、AC-ACアダプター、差し替え使用可能)、アース処理、フォノケーブル組込み、スピンドル軸受け内部洗浄、ドライブベルト交換、水平バランス、ドライブベルト走行位置調整、12h連続稼働テスト
一律:TD320系:68,000円、TD520系:88,000円(基本技術料&送料無料、部品代込み)
工数:1.0~1.25人日
参考:https://ultragroove.tokyo/newarrival20220316_thorenstd521sme3012s2/
3,TD320/520系の本体とSME製トーンアーム(3009/10/12系)を併せてフルレストアする場合、セット割でTD320系:90,000円、TD520系:110,000円(税込)にて承ります。
●納期について
通常、修理品のお預かりから 2週間~4週間程度になりますが、GW やお盆、年末年始など
長期休暇や繁忙期、また改造や破損等で部品を取り寄せる場合は、1 か月以上お時間を頂きますのであらかじめご了承下さい。そのほか、詳細はお問合せ下さい。
※コロナ対策および修理・通販のみの営業となるため、対面受付は行っておりません。
●Ultra Groove(合同会社アンセムインターナショナル)
〒106-0032 東京都港区六本木7-11-18
E-Mail:info@ultragroove.jp
公式サイト:https://ultragroove.jp/
古物商許可 東京都公安委員会:第306691507096
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